VOICE B

Special interview FROM TOUR

VOICE 6

木村明全体総指揮山邊将大カバー担当水谷大地 評価担当

タイガーが求めたボールの「ディープ感」

― ボールの「乗り感」を高めるために、どんな取り組みが行われましたか?

(木村)「乗り感」アップに取り組む上では、タイガー・ウッズの言葉も大きなヒントになりました。タイガーからは「ボールの性能にとても満足しているが、欲を言うなら、もう少し『ディープ感』が欲しい」というリクエストがあったんです。
タイガーはアプローチの打感を『ディープ』、『クリッキー』という言葉で表現していました。
複数のプロトタイプをテストした結果の解析から、『ディープ』、『クリッキー』とは打音の高低/乗り感の大きさが深く関係し、タイガーの言う『ディープ感』とは、『少し音が低く、フェースに長く乗る感じ』だということが分かりました。

(山邊)このタイガーからの声があったので、20年モデルで採用した衝撃吸収材の配合量を増やして検討しましたが、その方向では「クリッキー感」が増してしまい、感触がより金属的で硬い音になってしまう。つまり、「乗り感」が損なわれてしまうという課題が明確になりました。
ですので、我々材料開発チームも別の素材を添加していかなければならないという判断をしました。
そこで、これまでの衝撃吸収材の量は増やさずに、今回新たな物性の素材を追加し添加することで、「クリッキー感」とは反対の「ディープ感」を出した、というのが一番の変更点です。

― ボール初速やスピン量と違って、「乗り感」を評価するのは難しいのでは?

(水谷)我々が行ったテストは、ボールをクラブフェースを模した斜面に落として、どのくらいボールが乗っているかを測定するというものです。
1秒間に10万枚、最大で100万枚撮影可能な超高速カメラを使って、どのくらいの時間、ボールがフェースに乗っているかを計測しています。接触しているほんの僅かな時間でもその瞬間の映像を何枚も見ることが出来るので、その接触時間を測ります。
新しいTOUR B X/XSボールは、フェースにあたっている時間が長く、特に我々が「乗り感」と定義した、ボールがフェース上で滑って止まってから離れるまでの時間も長くなりました。
もちろん、フィーリングの部分ではプレーヤーが打ってみて、そのインプレッションと照らし合わせて、「乗り感」を判断し評価します。

(木村)フェースにボールが乗るというワードは昔からよく言われてきましたが、「乗り感」自体は、今まで客観的な指標がありませんでした。今回の新しいボールは、改めて我々で「乗り感」を定義して、それを測定しました。今まで、感覚的な部分でしか語られなかった「乗り感」を数値化して、評価したということです。

(山邊)新しいボールを開発する上で、「乗り感」というものが、自分としては未知の領域で、戸惑う部分もありました。
今回新たに搭載した「リアクティブiQ・ウレタンカバー」を開発するまで、多種多様なウレタン配合を検証しました。前作の20年モデルでも、色々な苦労の末に、新しい衝撃吸収材を添加していったのですが、今回は新しい素材を添加しても耐久性を損なわないように、ウレタンとの相性が良い素材を探していくことが大変でした。色々なウレタン配合を検証し、性能を損なうことなく、「乗り感」が向上する材料を検証したのですが、開発の初期段階から、水谷に評価してもらって、その検証とフィードバックを繰り返して、結果として良いものになったと思います。

(水谷)たしかに今回は、テストするサンプルの量が多かった気がしますね(笑)

PROFILE

木村明・山邊将大・水谷大地 プロフィール
ツアーボールの開発・設計に日々研鑽を重ねるボール開発チームのメンバー。
木村が中心となりボール全体の構造設計を行い、今作の進化技術である 「乗り感」をかなえるカバー材を担当したのは山邊。
水谷が試作品の「乗り感」の評価試験やプロの実打テスト結果をフィードバックし、 次回試作に反映する。
この繰り返しが、ブリヂストンのボールづくりの基盤となり、進化へとつながっていく。