VOICE B

Special interview FROM TOUR

VOICE 3

桒原 壮暢

ボール商品開発部

「弾道をデザインするのがディンプルの役割です。」

ー ディンプルにはどんな役割があるのでしょう?

例えば、ディンプルがない、表面がツルツルのゴルフボールがあったとします。この方が、空気抵抗がなくて良さそうにも思えますが、実際には、ディンプルの有無で、約二倍の飛距離差が生まれます。中身がすべて同じでも、ディンプルのないボールは、半分ほどしか飛ばないんです。ボールの飛距離に大きな差を生み出すのがディンプルです。
インパクト後、ボールが飛び出してから、弾道に影響を与えることが出来るのは、ディンプルだけです。弾道の高さを決めたり、飛び姿をコントロールしたりするので、ディンプルは「弾道をデザインする」と言われています。

— ディンプルが、ボールを飛ばすメカニズムを教えてください

ボールはインパクト後、非常に多い量のバックスピンがかかります。このとき、ディンプルの効果で、空気をかき回して、巻き込みながら飛んでいきます。それによって、飛行機の翼のように、上方の空気が速く流れて、下方の空気がゆっくり流れます。そのため上下の圧力差が生じ揚力が生まれ、ボールをより遠くに飛ばすことができます。
加えて、飛んでいるボールの後方には、空気の圧力が下がった部分が発生します。その現象が抵抗につながるのですが、ディンプルが、それを小さくする効果を発揮します。結果、ディンプルがあるボールのほうが、ツルツルのボールよりも抵抗は小さくなるんです。

— 過去のディンプルに比べて、どのような点が進化していますか?

仮に、現代のボールに、昔のゴルフボールのディンプルをつけたら、簡単に10ヤード以上飛距離が落ちるでしょう。そのくらいディンプルは、大きく進化しています。
ディンプルの個数で言えば、かつては「432」や「392」という具合に、400個前後が主流でした。しかし、現在は300個前後のボールが多くなってきています。これは、クラブやボールの性能の向上により以前よりも、ボールが打ち出された際のバックスピン量が少なくなっていることが要因です。
かつてのクラブやボールではスピン量が多く、400個前後の方が飛んだのですが、現在のクラブやボールでのスピン量では、300個前後がより飛ぶ領域になっています。クラブやボールの進化によって、ディンプルの設計も変わってきています。

— 『TOUR B X/XS』は、風に強いと評価されることが多いですが、ディンプルはどのように機能していますか?

風に強いということは、ボールが上がりすぎないということです。しかし、プレーする上では、上がりやすいという機能も必要です。高さを確保しつつ、上がりすぎないように、そしてボールの落ち際では、より揚力が発生して、遠くに飛ぶような設計になっています。
ちなみに、プロは意図的にボールを曲げたりしたいという要望もあるので、スピンの変動に対してある程度敏感なディンプルのほうが良いのですが、一般的なアマチュアゴルファーがそれを使うと、スライスの度合いが大きくなるなどの問題が起きやすくなります。そこで、『TOUR B JGR』や『PHYZ』には、「デルタウィング・ディンプル」という特殊な形状にして、スピンに対して寛容な設計にしています。それぞれのボールに求められる性能に応じたディンプルが必要です。

— 新しい『TOUR B X/XS』はディンプルが変わりました

我々のツアーモデルでは「デュアルディンプル」という、ディンプルの中に小さなディンプルがある独自のデザインを採用しています。打ち出し直後は、大小2つのディンプルが作用して余計な吹け上がりを抑え、後半にはひとつの大きなディンプルとして揚力を生み出すことで力強い大きな飛びを実現します。
新しい『TOUR B X/XS』では、更に風に強く、飛距離性能を伸ばしたディンプルを設計しましたので、多くのゴルファーの方に、ぜひ試していただきたいですね。

PROFILE

桒原 壮暢 プロフィール
2013年入社 ボール商品開発部 所属
ボールにとって非常に重要な役割を担う、ディンプル開発を担当。今回の新ディンプルをはじめ、「PHYZ」、「JGR」を含む全てのボールの弾道をデザインする「ディンプル開発」のスペシャリスト