VOICE B

Special interview FROM TOUR

VOICE 7

木村明全体総指揮山邊将大カバー担当水谷大地 評価担当

「ハイドロ LS コア」がもたらす高初速と低スピン

― 「乗り感」をアップさせる過程で、カバーが軟らかくなると、フルショットでのスピンが増えたりボール初速が落ちるリスクがあります

(木村)「乗り感」をアップしても、フルショット領域のスピンが増えたりボール初速が落ちてしまっては進化とは言えません。ボールのスピンを抑え、初速を落とさないために、今回は新開発の「ハイドロ LS コア」を搭載しました。
中心にいくに従って、コアの硬さが軟らかくなる「ハイドロコア」(※注 前モデルまで採用)をベースとして、今回の「ハイドロ LS コア」は、表面と中心の硬度の差をさらに大きくして、ボール初速を維持しながらし、より低スピンになっています。

(水谷)ちなみに、カバーが軟らかくなると、耐久性を心配する声もあるかもしれませんが、実は数年前と比べると格段に向上していて、プロでも1ラウンドに1個でもOKという人が多くなってきました。

(山邊)メーカーとしては、傷や摩耗があればすぐに変えたほうがいいと勧めていますが、飛距離が落ちたり結果が不安定になるリスクは、だいぶ少なくなったと思います。

― 「ハイドロコア」は、ブリヂストンのツアーボールの躍進に大きく貢献していますね。

(木村)「ハイドロコア」によって、低スピンと高初速が両立できたという意味では大きな技術の進化だと思いますし、プロの評価や活躍からもこの方向性は間違っていないかなと感じています。
今回の「ハイドロ LS コア」は、従来の水に加えて、さらに新しい素材を添加して、さらに改良を加えました。

― すでにプロたちもテストを開始しています。

(水谷)プロへの新しい『TOUR B X/XS』ボールの展開を始めたブリヂストンオープンからすぐに、宮本勝昌選手、宮里優作選手、市原弘大選手が使用をスタートしました。シーズンオフに本格的に試して、ほとんどのプロがスムーズにスイッチしてくれると思います。
実は、契約外の選手からも高評価を受けていて、来シーズンは使用プロが増えるかもしれません。特に感覚の鋭い選手や道具へのこだわりが強い選手からの評価が高く、嬉しく思っています。
時間にすると、ほんの何マイクロ秒という世界で、本来なら人間が果たして感じられるのか?という領域の世界をプロは察知していますから。

(木村)もう少し「乗り感」が欲しいとリクエストしてくれたプロたちから、その点がとても良くなったと評価してもらいました。彼らが求めていたものが、開発として実現できたと感じています。
先だって、アマチュア上級者の方とテストを行ったのですが、アプローチ領域での変化は、皆さんすぐに感じていただけて、やはり「乗り感」をアップしたことによるコントロール性が「良くなったね」と評価されました。

― 18年、20年モデルが高く評価され、実際にプロたちが多くの勝利を重ねました。成功しているボールを変えることに怖さはありませんでしたか

(木村)大胆にガラッと変えてしまうのは、たしかに大きなリスクがありますが。プロやアマチュア上級者の方と直接話し、フィードバックを受けて、少しずつでも良くなるところを探して、改良を重ねています。その方向性が間違っていないということだと思います。

究極を言えば、求められるツアーボールの性能は、「飛んで、止まる」という一点になります。ボール全体としては、しっかりと硬さがあって反発力が高く、カバーは軟らかくて止まる。それは昔から言われていることですが、その相反する要素を実現するレベルは、ずっと向上しています。今回の新しい『TOUR B X/XS』ボールで、「飛んで、止まる」という性能が、またひとつ前に進む事ができました。

PROFILE

木村明・山邊将大・水谷大地 プロフィール
ツアーボールの開発・設計に日々研鑽を重ねるボール開発チームのメンバー。
木村が中心となりボール全体の構造設計を行い、今作の進化技術である 「乗り感」をかなえるカバー材を担当したのは山邊。
水谷が試作品の「乗り感」の評価試験やプロの実打テスト結果をフィードバックし、 次回試作に反映する。
この繰り返しが、ブリヂストンのボールづくりの基盤となり、進化へとつながっていく。