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INSIDE STORY Vol.3

ずっと身近で感じて
きた
不屈の精神

ツアープロ担当として宮里藍プロの試合に帯同し、クラブのメンテナンスを中心に彼女のそばで親身のサポートを行ってきた、中原創一郎による14年間の回想。

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ブリヂストンスポーツ株式会社
ツアープロ担当

中原 創一郎

2002年入社以来、プロサービスとして多くのプロをサポート。
宮里藍プロ転向後は、クラブメンテナンス担当としてツアーに帯同。
宮里藍が海外ツアーで戦っていた2011年から海外赴任し、海外ツアーをサポート。
2014年の任期終了後もオフの合宿や数試合に帯同し、サポート。
2002年入社以来、プロサービスとして多くのプロをサポート。宮里藍プロ転向後は、クラブメンテナンス担当としてツアーに帯同。
宮里藍が海外ツアーで戦っていた2011年から海外赴任し、海外ツアーをサポート。2014年の任期終了後もオフの合宿や数試合に帯同し、サポート。
Chapter 1
わずか3球で
クラブを見極める、
卓越した評価能力。

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 すごく目に力のある子だな、というのが宮里藍選手と最初に会ったときの印象です。まだ高校3年生だったのにたいへん礼儀正しく、受け答えもハキハキしていて会話がしやすい子でした。後日、クラブテストをしてもらったんですが、ドライバーに関しては文句なしという感じですぐに使ってもらえました。そして、ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンで見事優勝。その後、お兄さんたちと同じく彼女も当社の契約プロとなり国内ツアーに参加し始めると、私も試合に帯同してクラブのメンテナンスを担当しました。

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 3年目から彼女はアメリカツアーに参加しますが、2011~2013年の3シーズンは私も現地に拠点を置いて、7、8割の試合には帯同してサポートしました。具体的には、一緒に練習ラウンドを回ってコースの特徴を考えたり、芝の状態や下の固さや風の具合などをチェックしたりしたうえで、実際にどんなクラブが適しているかといった意見を聞いて対応する形です。普通の試合のときはいつも練習日で帰りますが、メジャーの試合では大体最終日まで残ります。2011年のエビアン選手権では、運よく彼女の優勝の瞬間に立ち会うこともできました。

 その3シーズンの前後も、シーズンオフのクラブテストなどで年に数回はアメリカに行って彼女のサポートを続けていました。彼女は極端に言って、3球打てばそのクラブがどんなクラブなのかわかってしまい、的確なコメントができるんです。毎回、持ち込んだクラブをちゃんと設計したとおりに評価してくれて、その研ぎ澄まされた感覚には本当に驚かされていましたね。

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Chapter 2
圧倒的な体格差を乗り越え、
世界で勝つために…
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 彼女のクラブへの要求はやはり、自分よりもはるかに大きくパワーもあるプレーヤーたちにどのように対抗していくかということがポイントになります。ドライバーの飛距離はその代表的なもので、当初は打感や形状にかなりこだわりを持っていたんですが、飛距離を求め、機能重視の趣向に変わっていきました。また、2013年の秋から5番アイアンの代わりに6番ユーティリティを入れましたが、それは少しでも高さを出すことが狙いでした。短いクラブで厳しいピンポジションを上から攻める大柄なプレーヤーたちに対し、彼女はそれより後ろの長い距離から同様に攻めていかなくてはいけないので…。

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 彼女は1打1打完璧で欠点がなく、それまでに使っているクラブもほぼすべてが彼女のヘッドスピードに対して最大限のことができていたので、さらに上のパフォーマンスを引き出すということは非常に困難なミッション。その点で、クラブの切り換えには毎回苦労していました。

 ただ、彼女も人間ですから日によっては調子を落とし、欠点が出てくることもあります。しかし、彼女はすぐに悪くなっているところを自ら修正して復調することが出来るんです。そんなことができる理由は、何年もかけて自分の傾向を把握しているので、それぞれの状態に応じた対処法が大体つかめているからなんです。たとえば、球が捕まらなくなってきたときは下半身に問題があるとか、肩の入りに問題があるとかいうように…。彼女がそうなったのは、アメリカに行ってから一時期陥ったスランプが契機になっていると思います。そのときはクラブをどう振っていいかわからないというほどの重症で、体の動きはもちろんメンタルな部分も含めて一からやり直しました。この経験が教訓として、日々の練習に活かされているのでしょう。

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Chapter 3
ゴルフ界の発展に向けて、
今後の活躍にも期待。
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 近年のアメリカツアーは、コースの設計も含めて全体的にますますパワーを求められるようになっている傾向があります。私もゴルフ場を離れてからは彼女とあまり接することがないのではっきりとはわかりませんが、彼女は体が大きなプレーヤーたちにパワーで劣る分、練習やトレーニングに工夫を凝らして毎日精一杯やってきたのではないでしょうか。きっと私の想像以上に…。だから引退することを聞いたとき、さびしい気持ちにはなりましたが、現在のタフな生活から離れて少しゆっくりできるんだなと思ったら正直ホッとした部分もあるんです。

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 引退したらまずは今までにできなかったことを十分楽しんでいただきたいですね。もちろん急にゴルフからは離れられないでしょうから、できれば将来有望な後輩ゴルファーの相談に乗ったり、指導をしたりしてほしいと思います。その結果、彼女のアドバイスのおかげでアメリカツアーで優勝できたとか、世界ランキングで上位になったとかいうプレーヤーが増えていけば、彼女もうれしいでしょうし、ゴルフ界にも大きなプラスになりますから…。

 私自身も、彼女のおかげでこれまでいろいろなことを経験させてもらいました。彼女が活躍した期間に自分がツアープロ担当を務められたことは、なんてタイミングがよかったんだろうと思います。この上なくありがたいことです。彼女には、この14年間への感謝の言葉とともに、これから歩んでいく人生に向けてエールを送りたいですね。

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