
| マスターズ到来! オーガスタが美しく輝く特別な季節がやってきました。でも僕にとってはほろ苦い思い出が1つ。そう、それは1年前。泣くまいと思っても、止めどなく流れた僕の涙の物語、皆さん聞いてくれますか? いつになく春先から好調だった丸山さんは、大きな自信を胸にマスターズ入りを果たしました。初日はフィル・ミケルソンとダレン・クラークと一緒でしたが、流れは良好。いいゴルフが出きていた…ように思います。でも定かではありません。なぜなら僕に、その日の正確な記憶がないからです。そしてそれを振り返り映像を見る勇気もない。 僕の記憶が飛んでしまうような事件が起きたのは、アーメンコーナーの中盤、12番でした。前に打った選手が8番アイアンでグリーンセンターに乗せたのを見て、僕は風は多少のフォローと判断しました。目の前でほんの数秒前に打って乗せているわけですから、余程のミスがない限り同じ8番で打てばグリーンをとらえられるはず、と思ったのです。 でも浅はかでした。オーガスタの神様は、いたずらにもそこで逆風を吹かせたのです。丸山さんのナイスショットは、無情にも風に押し戻され手前の池につかまります。ところが、丸山さんの表情は穏やかでした。自分の判断で出した結果を受け止める勇気を持っていた。ところが僕にはそれができなかった。切り替えが効かなかったのです。 そこで起きた悪夢を覚えていらっしゃる方も多いはず。打ち直しの3打目をサンドウェッジのフルスイングで打ちたい丸山さんは、僕に85ヤードを要求しました。なのに僕が示したのはピンまで75ヤードの場所。なぜ10ヤード間違ったかは、未だにわからないんです。とにかく間違いに気づいたのは、ドロップをして85ヤードのイメージを膨らませ丸山さんが素振りをしている最中でした。 最初は誤魔化そうかとも思いました。グリーンオーバーしても風のせいにするとかしてね。でも、第1打が池につかまってもミスを受け入れ穏やかな表情を崩さなかった丸山さんの真のパートナーになるためには真実を伝え、真正面から戦わなければならないと思い直しました。 振り絞った声は蚊の鳴くような声。『すみません…ここは75ヤードです』。丸山さんにとっては晴天の霹靂。10ヤードという距離が命を削って戦う選手にとって、どれだけ大きな誤差だったことか。結局そこからの第3打はバンカーにつかまり、バンカーから脱出できずに『8』の大叩き。 それから6ホール、丸山さんはミスを怒るわけでもなく、普段通りに僕に話し掛けてくれ、時には冗談も言ってくれたはず。でも僕は笑うことができなかった。丸山さんの優しさに応えることもできませんでした。 あのとき、僕が学んだのは気持ちの切り替えの大切さでした。池に入れたことをいつまでも引きずっていたから、距離を測り間違えたのです。過ぎたことを、いつまでもくよくよ考えても次に進めないのを身を持って知りました。 ある人にこんなことを言われたことがあります。「切り替えの早さは集中しているかどうかだよ」。その通りだと思います。集中していれば、ミスをしても必ず次の策が浮かんでくるものですからね。 あれから1年、僕はいろんな努力をしていました。1年でそんなに大きく変われるわけはないけれど、今年あの悪夢の12番に立ったときは、「試練を与えてくれてありがとう。お陰で自分を磨くのが楽しみになったよ」って感謝できるくらいになれていたらいいな、と思っています。 あの大舞台であんな単純なミスを犯して全国に恥をさらしたのだから怖いものなし。マスターズを楽しみにしている皆さん、今年、僕、杉澤の目標は18ホール、4日間笑顔でプレーすること。応援よろしくお願いします! |
| 提供:スポマガGOLF |
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杉澤伸章プロフィール 愛知県蒲郡市出身。高校球児からプロゴルファーを目指し22歳のとき愛鷹シックスハンドレッドの研修生となる。プロへの道は早々に断念したが、同コース所属の横田真一に誘われプロキャディに。国内ツアーで様々なプロのキャディを経験した後、02年から丸山茂樹の専属キャディ。03年クライスラー・クラシック・オブ・グリーンズボロで丸山がツアー3勝目を挙げたときバッグを担いでいた。愛称『スギちゃん』 |
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