ブラント・スネデカーは大学2年生だった2001年にブリヂストンのボールに出会ったことがきっかけで、プロ転向と同時にブリヂストンと契約を結び、ブリヂストン・ファミリーの一員になった。15年前、彼が試したそのボールが優れた物であったからこそ、彼は惚れ込んだわけで、スネデカーとブリヂストンとの縁は、始まりは「物ありき」だった。

「でも、それだけではない」とスネデカーは言った。
「プロゴルファーになることは幼いころからの夢だった。僕は兄と一緒に祖母からゴルフの手ほどきを受けて育った。そのころから僕がずっと憧れていたのはデービス・ラブ。彼が優勝する姿をみるたびに、僕もあんなプロになりたいといつも思っていた」。

ブリヂストンのスタッフプレーヤーたちは、互いに良きライバルでありながらも、互いに信頼し合うブリヂストン・ファミリーとして、情報交換したり、叱咤激励しながら高め合っている。

「でも、それだけでもない」と、スネデカーは、さらに言葉を続けた。
「ブリヂストンは、このゴルフの世界で最も素晴らしいボールを作っている会社。そして、僕らスタッフプレーヤーをサポートしてくれる人々が最も素晴らしい会社でもある。ツアーレップは僕にとってベストなものは何かを常に考え、それを僕の手に渡してくれる。僕と直接、接する人々がこれほど素晴らしいということは、その後方に控えている会社や組織全体がとても素晴らしいということ。僕はそう思っているんです」

スネデカーが夢を追いかけるとき、そこには必ず、素敵な人が存在している。プロゴルファーを目指していたときは、視線の先にラブがいた。そして、マスターズ制覇を夢見るスネデカーの陰には、トビー・ウィルトなる人物がひっそりと存在している。

ウィルトは米国の企業家。スネデカーはウィルト財団の奨学金でテネシー州内のバンダービルト大学へ進み、ゴルフ部で腕を磨いてプロゴルファーになることができた。そして、そのウィルトは90年代の終わりごろから、マスターズでティオフする選手たちの名前を読み上げるスターター役もこなしている。

スネデカーがアマチュアで初出場した2004年も、最終日に崩れて悔し泣きした2008年も、肋骨を痛めて不調に終わり、予選落ちした2009年も、連続で出場してきた2011年以降も「これまでのマスターズのすべてで、僕はトビーに名前を呼ばれ、ティオフした」。

プロになる以前も、プロになってからも、現在も、スネデカーは素晴らしき人々と素晴らしき物に支えられながら、厳しいゴルフ界を戦っている。
「ブリヂストンが僕らを後方支援してくれる。最大限のサポートをしてくれる。そういう環境の中でずっとゴルフをやってこれていることは、とてもラッキーなことだと思う」

スネデカーだけではない。「TEAM-B」の選手たちは、みな同じ思いを胸に抱き、間もなくオーガスタへ向かっていく。

取材・文／舩越園子（在米ゴルフジャーナリスト）